インドカレー伝

インドカレー伝

インドカレー伝

ハードカバーの分厚い本で、押しの利いたタイトルなので、書棚でも存在感たっぷりの一冊ですが、中身もかなり読み応えがあります。内容はインドの食文化の変遷が書かれた読み物なんですが、著者がイギリス人なので、日本人が語るカレー観とまた少し違った視点も感じられて、なかなか興味深い内容です。
著者によると、インドカレーの歴史の中で重要な影響を与えた出来事は2つあるとのことで、一つはムガル帝国による侵略、もう一つはポルトガルバスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓したことだそうです。前者はペルシャ文化による、カバブビリヤニなど濃厚でこってりとした肉料理を中心とした食文化をもたらして、後者はヨーロッパの影響のみならず、大航海時代の交流による他大陸の食材や食文化の影響を受けたとのこと。アメリカ大陸原産の唐辛子も、ポルトガル人の手でインドにもたらされたというのは結構驚きですね。それまでは、ナガコショウで辛味を出していたそうです。
著者がイギリス人ということで、当然イギリスによる統治の様子も描かれていて、当時インドで暮らしていた東インド会社の人々の暮らしぶりや、インドからイギリスに渡った人々の事など、イギリスとインドの文化がフュージョンしていく様子なども描かれています。
インドは歴史の古い国なので、インド料理も何千年も前から今の形だったと思ってましたが、時代とともに様々な文化の影響を受けながら今の形になっている事がよくわかります。更に、今でもインド各地の料理や外国の食文化が互いに影響しながら、少しずつ変化しているとのことです。
ところで、イギリスには美味しいインド料理店もたくさんあるらしいですね。僕はロックやサッカーも好きなので、イギリスは大好きな国の一つ。若いころ一度だけロンドンへ行った事があるんですが、その時はカレーを一度も食べなかったので、いつかまた行ってみたいと思ってます。