南の島のカレーライス

南の島のカレーライス―スリランカ食文化誌

南の島のカレーライス―スリランカ食文化誌

タイトルからはあんまり想像できないけど、この本はスリランカ料理について書かれた本です。レシピ本ではなくて、著者がスリランカを訪れて出会った食文化について文章を綴った紀行文的な読み物です。あっ、よく見るとタイトルの下に小さく「スリランカ食文化誌」って書いてありました(笑)。
スリランカ料理といえば、一般的にはシャビシャビとしたスープ状のカレーのイメージが強いですね。札幌のスープカレーなんかもルーツはスリランカカレーだとかよく言われてたりします。そんなカレーが続々登場するかと思いきや、読んでも読んでも、ほとんどカレーが出てきません。登場するのは、サンボール、ホディ、アンブルティアル、ジャーディーなどなど、素朴な家庭料理の数々。それらが、様々なエピソードを交えて紹介されます。有名なモルディブ・フィッシュやセイロン紅茶の事なんかも出てきます。
興味深かったのが、スリランカの人と椰子の木との切っても切れない強い結びつき。ポル・サンボールという、椰子の実を削って唐辛子などと和えたフレーク状の料理を、スリランカの人はこよなく愛していて、普段の食事に欠かせないものになっています。でも、スリランカ人のソウルフードとも言えるこうした料理は、外国人向けのレストランなどには全く置いてなくて、どこか「よそ行き」的なメニューばかりが揃っているそうです。スリランカの人は、外国人は辛いものを絶対食べないと信じていて、自国の料理にコンプレックス的な感覚を持ってたりするとか。そうしたことからも、庶民的なスリランカ料理のことはあまり知られていないのかもですね。
この本は、数年前に名古屋のスリランカ料理店「コロンボ」のマスターに紹介してもらいました。マスターはこの本を読んでスリランカに興味を持って、ついに本当にスリランカに行ってしまって、案の定現地の料理にハマってしまい、日本でスリランカ料理店をやっているというマニアックな方です。メニューにない家庭料理を出してくれた事が何度かあるんですが、カレーというよりは「お惣菜」的な、日本人にも合いそうな美味しい料理がたくさん出てきて、もちろんカレーも美味しいんだけど、それだけでは語れない独特の食文化を味わうことができました。
巻末にレシピも少しだけ掲載されています。